相続登記に必要な書類とは?

土地や建物(不動産)を持っていた人が亡くなった場合、相続人に不動産の名義を変更するためには相続登記が必要です。

相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。例えば福島市や伊達市にある不動産は、霞町にある福島地方法務局の本局に相続登記を申請しなければなりません。

亡くなった人が福島県外に不動産を持っていた場合は、不動産を管轄するそれぞれの管轄法務局で申請する必要があります。遠方の法務局でも直接窓口に持っていく必要はなく、郵便で申請することも可能です。

法務局は全国各地にありますが、相続登記に必要な書類はどこの法務局でも同じです。

相続登記に必要な書類は、大きく分けると以下の通りになります。

  • 戸籍謄本など
  • 不動産の評価額が分かる書類
  • 遺言書
  • 遺産の分割内容を証明する書類
  • 登記申請書

相続登記に必要な書類:戸籍謄本など

相続登記には、不動産を持っている人が、実際に亡くなっていることを確認するため、また亡くなった人の相続人が誰かを確認するために、亡くなった人の生まれてから亡くなるまでの除籍・原戸籍謄本が必要になります。

また亡くなった人が不動産の所有者と同じであることを確認するために、戸籍の附票、または住民票の除票が必要です。登記簿上の住所と住民票上の住所が異なる場合に、住所変更の登記は必要ありませんが、住所が移っていることが明らかにするため、登記簿上の住所から現在の住所までの経緯を証明する住民票等が必要になります。

さらに相続人が生きていることを確認するために、相続人全員の戸籍謄抄本が必要になります。相続人の戸籍は謄本ではなく抄本でも問題ありません。また不動産を相続する人の住民票(マイナンバー記載なし)が必要です。

戸籍謄本や住民票は市役所等で取得することができますが、市役所等が遠方にある場合には郵便で請求することができます。詳しくは各市町村等のホームページをご覧ください。

除籍・原戸籍は1通750円、戸籍は1通450円、住民票・戸籍の附票は1通200円~300円かかります。郵便で戸籍等を請求する場合は返送用の郵便代と定額小為替100円~が必要になります。

相続登記に必要な書類:不動産の評価額が分かる書類

相続登記を申請するには国に登録免許税を納める必要があります。登録免許税は不動産評価額の1000分の4(0.4%)かかります(詳細は下部)。この不動産の価格を確認するため、相続登記には不動産の評価額が確認できる書類が必要になります。

不動産の評価額を確認するためには、次の書類で確認することができます。

  • 固定資産税・都市計画税納税通知書
  • 固定資産評価証明書・名寄帳

固定資産税・都市計画税納税通知書

毎年5月に不動産の所有者宛に固定資産税等の納税通知書が届きます。納税通知書には課税明細書が添付されており、そこに不動産の評価額が記載されているので、この課税明細書を相続登記に利用できる場合があります。

令和元年5月現在、福島県内ですと福島市・郡山市内の不動産については課税明細書のコピーで相続登記を申請することができます。

福島市・郡山市内以外の市町村の不動産は次の書類が必要になります。

固定資産評価証明書・名寄帳

固定資産評価証明書・名寄帳は不動産の評価額を明らかにする書類として相続登記で使用することができます。ただし福島市・郡山市以外では原本が必要になります。

各市町村では市役所等の窓口で、固定資産評価証明書(福島市では1通300円~)を取得することができます。亡くなった人の評価証明書を取得する場合には、申請人が相続人であることを証明する戸籍謄本等が必要になります。

また市役所等で名寄帳を取得して、これを相続登記に利用することも可能です。名寄帳とはある人が所有している不動産の一覧表なので、亡くなった人が当該市町村内に所有していた不動産を調べることができるので非常に便利です。

相続登記に必要な書類:遺言書

遺言書亡くなった人が遺言書を残していて、不動産をだれに相続させるか遺言書で指定していた場合には、遺言書が相続登記に必要になります。

遺言書で「長男○○に□□の土地を相続させる」と記載されていた場合など、相続人に相続させる遺言書があった場合は、相続人単独で登記申請することができます。

遺言書が見つかった場合

亡くなった人が遺言書を残していた場合、自筆で書かれた遺言書は家庭裁判所での検認という手続きをしなければ相続登記に利用することができません。また遺言書が封筒などに封緘されていた場合には、勝手に開封してしまうと罰金がかかりますので、開封せず家庭裁判所での検認手続きを行う必要があるので注意が必要です。

また公正証書遺言を残していた場合は、公正証書遺言の正本(謄本)が相続登記の必要書類になります。公正証書遺言は家庭裁判所の検認を経る必要がないので、そのまま相続登記に使用できます。

遺言書が見つからなかった場合

自筆の遺言書

こんな変なものでも遺言書になります

遺言書が見つからなかった場合でも、亡くなった人が家族に内緒で遺言書を作っている場合があるので、しっかりと探さなければなりません。

遺言書はちゃんとした形で残っていなければ遺言書として認められないのでは、と思われがちです。しかし自筆で日付と押印がされていれば有効な遺言書と認められる(図参考)ので、財産の分け方をメモしたチラシがあれば遺言書になるので注意が必要です。

また銀行の貸金庫に遺言書を残している場合もあるので、亡くなった人が貸金庫を利用していた場合は金融機関等に連絡して貸金庫を開扉してもらい中身を確認すべきでしょう。

さらに公正証書遺言を残していたかどうか確認することも重要です。最寄りの公証役場で、戸籍謄本等と相続人の本人確認書類を持参していくと、全国の公証役場に公正証書遺言があるか確認することができます。

遺言書を探した結果、見つからなかった場合には、遺産分割協議などを行う必要があります。

相続登記に必要な書類:遺産の分割内容を証明する書類

遺言書がなかった場合で、相続人が二人以上いる場合には”遺産の分割内容を証明する書類“が相続登記に必要になります。相続人が一人しかいない場合には不要です。

>>誰が相続人になるのか確認する場合はこちらから

遺産分割協議書

遺産分割協議書は相続人全員が遺産をどのように分けるか決めた書類です。

遺産分割協議は相続人全員が参加する必要があるので、相続人が行方不明だったり、認知症などを患っていて意思表示ができない相続人がいる場合は、遺産分割ができません。

相続登記に遺産分割協議書を添付した場合には、遺産分割協議書に押印した実印の印鑑証明書を添付する必要があります。この印鑑証明書は作成の期限はありません。

相続放棄申述受理証明書

相続放棄をした相続人は、初めから相続人ではなかったものとみなされます。相続人の一人以外を除いて相続放棄をした場合は、家庭裁判所から交付される相続放棄申述受理証明書を相続登記の申請に添付することにより、遺産分割協議書を添付する必要はありません。

特別受益証明書

亡くなった人から生前に相続分を超える贈与を受けていた場合には、特別受益がある状態になり、特別受益証明書という書類で相続分がないことを証明することができます。特別受益証明書には印鑑証明書(作成期限なし)を添付する必要があります。

特別受益証明書は事実上の相続放棄と呼ばれることがあります。特別受益証明書は未成年者の相続人がいる場合にも利用することができる場合があるので便利ですが、相続放棄とは違い借金は帳消しにならないので注意が必要です。

相続登記に必要な書類:登記申請書

法務局に相続登記を申請するには登記申請書を作成しなくてはいけません。

書式については法務局のホームページにサンプルが載っているので、これを印刷して空欄を記入します。

登記申請の記載項目

1:様式タイトル

一行目に「登記申請書」と記載します。

2:目的

亡くなった人が単独で不動産を所有していた場合には「所有権移転」、共有で所有していた場合には「○○持分全部移転」と記載します。

3:原因

不動産を所有していた人が亡くなった日を記載します。遺産分割協議をした日ではありません。

4:相続人

まず被相続人の氏名を記し、その下に不動産を相続する人の氏名、住所、連絡先電話番号を記載します。住所は省略せずに、住民票どおり正確に記載しましょう。相続人が複数いる場合は、相続する持分の記載が必要です。

また申請する人の押印が必要です。相続登記は認印で大丈夫です。

5:添付書類

相続登記には、戸籍謄本や住民票など様々な書類を添付する必要がありますが、「登記原因証明情報」「住所証明情報」とのみ記載します。

「登記原因証明情報」は相続登記の場合は、戸籍謄本等・遺産分割協議書・印鑑証明書などを含みます。

代理人が申請する場合には、委任状を用意する必要があるので「代理権限証明情報」と記載します。

6:申請日と法務局名

登記申請書を法務局の窓口に提出する日、郵送する場合は発送日と、申請先の法務局名を記載します。申請先は、不動産の管轄する法務局です。くわしくは各法務局のホームページで確認してください。(福島地方法務局のホームページはこちら

7:課税価格

固定資産評価証明書に記載の固定資産税評価額の1,000円未満を切り捨てた金額を記載します。登記する不動産が複数ある場合は、合算した後1,000円未満を切り捨てます。

8:登録免許税

登記申請にかかる手数料に該当する金額です。「課税価格」に0.4%を掛け100円未満を切り捨てた金額を記載します。

※相続登記は令和3年3月31日まで登録免許税が減税になる措置が設けられています。詳しくは法務局のホームページをご覧ください。

9:不動産の表示

土地の場合は登記する不動産の所在、地番、地目、地積を、建物の場合は所在、家屋番号、種類、構造、床面積を、登記事項証明書の通りに記載します。登記事項証明書に記載されている“不動産番号”を記載する場合は、所在や地番などを省略することができます。

相続登記の税金:登録免許税

相続登記を申請するには国に登録免許税を納付する必要があります。

基本的には登録免許税と同額の収入印紙を購入して、申請書と別の用紙に貼付し、その用紙を申請書と一括して綴り契印をして提出します。

たいていは法務局内に印紙売場があるので、申請の直前に印紙を購入して相続登記を申請します。

相続登記に使用した書類を再利用する:原本還付

相続関係説明図原則として登記を申請すると登記に使用した書類は戻ってきません。添付した書類を再利用するためには、原本還付という手続きをします。

原本還付は添付した書類のコピーを取って、「原本に相違ない」旨の記載と押印をすれば、登記完了後に添付した書類を返還してもらうことができます。

ただし戸籍謄本等を全てコピーとるのは大変なので、相続登記では「相続関係説明図」という書類を作ることで、“登記原因証明情報”として提出された書類を返還してもらうことができます。

「相続関係説明図」は決まった様式はありませんが、基本的に以下の要素を記載した図のことを指します。

  • 様式タイトル:被相続人○○相続関係説明図
  • 亡くなった人の氏名・最後の住所・登記上の住所・死亡した年月日
  • 相続人の氏名・住所・生年月日

相続登記は司法書士にお任せください!

相続登記をしないで放置しておくと、相続人や相続分を確定することが困難になり、手続きをするのに、時間も手間も費用もかかり、また相続人間トラブルなど思わぬ不利益を受けてしまうこともあります。

相続登記は様々な書類が必要な上、遺産分割協議書など法律上の知識が必要な場面もあります。司法書士は相続登記の専門家、必要書類の収集・作成から登記申請まで一括でおまかせできますので、相続登記の手続きはお近くの司法書士にご相談ください。

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